しかし生きていくためにはお金が必要です。
お金を稼ぐためには働かなくてはいけません。
そして僕のような一般人以下の人間が
お金を稼ぐには時間を時給で売らなくてはいけません。
僕は中華料理屋の厨房でアルバイトを始めました。
1日8時間、週5日。働きました。
朝は目覚ましに叩き起こされ強制的に店舗へ向かい
夜は次の日の出勤のために早く布団に入り
休日は仕事の疲れを回復するために一日寝るだけ。
携帯電話と体力を充電していただけです。
来る日も来る日も…2年間。
僕は体を壊すような地獄の日々を見送りました。
1ヶ月が、1年がまるで風のように過ぎ去っていきます。
でも、何も起きなかった。
何も起きず、何もできず、描いていた夢も趣味も
いつしか記憶のおもちゃ箱にしまって鍵をかけて
毎日、毎日、思考の自由は縛られつづます。
貴重な一度きりの人生を会社にプレゼントし続けました。
理不尽な客が先輩に怒鳴られても笑顔で対応します。
38度の熱があってもシフトに穴が空けば代わりに出勤し続けます。
勝手に労働時間を延ばされたことで
友達との遊びをキャンセルしました事もありました。
『バイトのお前はただの消耗品だ』と
自分という人間の全存在を否定された気分でした。
自分なんか居ても居なくても変わらない存在…
ドラクエの村人Aと変わらない存在なんだな、と。
「ここは●●の村だよ!」
という台詞だけインプットされた
モブキャラのような存在感です。
バイト仲間からは「それが普通だ」と言われました。
人生ってのはこういうもんだ。
大人ってのはこういうもんだよ、と。
疑問、疑念で頭ん中がぐっちゃぐちゃです。
それでも毎日、言い続けました。
「もう嫌だ!もう嫌だ!!もう嫌だ!!!」
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